トラブル対処
時計が磁気帯びしている?
精度の良かった機械式時計が急に1日何分も進むようになったら、最も考えられる原因は磁気帯びです。よくあることで、時計が傷むわけでもなく、直すのも数秒で済みます。
何が起きているのか
時計のリズムを決める髪の毛ほどの細さのヒゲゼンマイは、伝統的に鋼の合金で作られています。強い磁石の近くに置くと、渦巻きが磁気を帯び、互いにくっついてしまうことがあります。するとヒゲゼンマイが実質的に短くなり、テンプが速く振れて、時計が進みます。時には大きく進み、1日数分進むのは珍しくありません。
サイン
- 日差が突然、数秒から数分に跳ね上がる。
- 姿勢によって、あるいは日によって精度がばらつく。
- 頻度は低いものの、止まっては動き出したり、遅れたりする。
方位磁針でのテスト
- スマートフォン、ノートパソコン、金属から離して、テーブルに方位磁針を置きます。スマートフォンのコンパスアプリは、スマートフォン自体が磁気を帯びているため、あまり向いていません。
- 時計を外し、方位磁針の上や周りをゆっくり動かします。
- 針が時計を追うように振れたら、時計のどこかが磁気を帯びています。
ステンレスのケースやブレスレットで針が少しぴくりと動く程度なら正常です。針がはっきりと時計を追いかけるなら、磁気帯びの証拠です。
直し方
どの時計店でも、裏蓋を開けずに数秒で脱磁(磁気抜き)してもらえます。無料か、わずかな料金で済むことがほとんどです。ストラップ1本ほどの値段で脱磁器を買い、自分で行うこともできます。青やグレーの小さな箱型の器具で、ボタンを押したまま時計を近づけ、ゆっくり十分な距離まで離してからボタンを放します。もう一度方位磁針で確かめ、必要なら繰り返してください。
脱磁できれば、時計はすぐに元の精度に戻るはずです。戻らない場合はきちんと見てもらう必要があります。オーバーホールの時期をご覧ください。
磁気の発生源はどこにある?
現代の暮らしは、磁石であふれています。よくある原因は次のとおりです。
- スマートフォンのスピーカー、MagSafe充電器やケース、ウォレット。
- ノートパソコンのふた、タブレットのカバーやキーボードケース。
- ハンドバッグのマグネット式の留め具や、一部のジュエリーボックス。
- スピーカー、ヘッドホンとそのケース。
- モーターのシールドが不十分な安価なワインディングマシーン。
- 空港や病院の機器、IHクッキングヒーター。
磁石の磁界は距離とともに急速に弱まるので、数センチ離すだけでも大きな違いがあります。時計をノートパソコンの上やスマートフォンの隣に置いたまま、一晩過ごさせないようにしましょう。
耐磁時計
「耐磁」とうたう時計はISO 764規格を満たしていますが、その保護はそれほど強くありません。現行のムーブメントの中には、シリコンや非鉄金属のヒゲゼンマイを使ってはるかに高い耐磁性を実現しているものがあり、いくつかのメーカーは15,000ガウスの耐磁性を認定しています。これは日常生活で出会うどんな磁気にも耐えられる水準です。ほかに、軟鉄製のインナーケースでムーブメントを磁気から守る方法もあります。